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Column 幼稚園だより: 2023年8月

9月の幼稚園だより


									
幼い頃、祖父のあぐらの中にすっぽりとはまり、聞かせてもらった、ある戦争体験の話があります。
祖父は陸軍に入隊し中国に渡り、
「ヘルメット被って、重たいリュック背負って、鉄砲持っていっぱいいっぱい歩いた。
そん頃の戦争は呑気なもんで、昼休みってのがあってな、その時間はにぎりめし喰ったり昼寝をしたりするもんで、敵も味方も鉄砲や大砲を撃つもんじゃないって決まりがあった。
ある日の昼休みに、にぎりめし喰おうと思って、草むらにどっこいしょって腰掛けて、ヘルメットを外した。
けど、何かあったら命が危ないと思って、念のため、ちょこんと、いい加減に頭の前のほうにのせた。
いい加減にな。
で、にぎりめしにガブリとかぶりついたちょうどその時、鉄砲の弾がズドンッ。じいちゃんのこの額に飛んできた。
だから、じいちゃんの額のここん所、凹んでんだぞ」
祖父は、そのくぼみに私の指先をやり、触らせてくれました。
そして、こう付け足すのでした。
「いいか? いい加減って、チャランポランとは違う。ちょうど良い加減っていう意味なんだ。
良い加減に被ったヘルメットは弾の勢いを受けてくれた。
だから頭に弾が直接ズドンって当たらなかった。
お寺の鐘みたいなもんだ。あの時じいちゃんがヘルメットをきちんと被っていたら、弾がヘルメットを突き破ってあの世行きだったかもしれん。
もし、被ってなければ絶対生きてないし、こんなふうにお前の母ちゃんが生まれることも、お前が生まれる事もなかった。
自分の命は自分で守るんだ。良い加減を知るのが大事。良い加減に生きるんだぞ」
大人になった今でも、「いい加減」という言葉を聞くたびに祖父のこの話と、懐かしい温かさを思い出さずにはいられません。
と同時に、「戦争は人間を狂わせるから、絶対にしてはならん」と言っていた祖父の目を思い出します。
 
2023年、夏。
私たちが生活する中で、おにぎりを食べようとする時に、弾が飛んでくる危険はありません。
戦場ではないからです。なんという幸いでしょう。
では、今、戦場ではないこの国は、本当の意味の平和を手に入れたのでしょうか? そもそも平和とは何? 戦争って何? 
このような問いは、人間の生き方、考え方の根本的な部分につながるものです。
8月には広島、長崎の日、そして終戦記念日があり、戦争をテーマとした報道が新聞やテレビで取り上げられます。
ご家庭でも是非子どもたちと話し合ってみてください。
幼い彼らの目線に立って一緒に話す事によって、私たち大人が教えられることも少なくないはずです。
このテーマに大人が背を向けることなく、子どもたちとちょうど「良い加減に」対話することこそ、「平和をつくる人」を育てる第一歩なのではないでしょうか?

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