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4月の幼稚園だより

まだ寒さの残る2月のある朝、校舎の近くで、ささやき声のような声が聞こえてきました。
「ホー、、、、、、ホ、、、、、、」「ケッキョ」
お!ウグイスだ!
かすれて、声量もない上にすぐに途切れてしまうので、とても自信のない声にも聞こえますが、何度も何度もトライしています。
姿は見えませんが、紛れもなくウグイスの声。
自然と口角があがり、「がんばれ!」と応援する気持ちになっている自分に気がつきました。
その後、同じ茂みから聞こえるウグイスの声は、日に日に「ホーホケキョ」に近づいていきました。
初めはかすれたような小さな声でしたが、少しずつボリュームと深みを増して、見事な歌声になっていきました。
 
4月。新しい学年の始まりです。
新しいネームバッチ。新しい先生。新しいクラスメイト。新しい教室。そして、新しいルーティーン。
しばらくは、子ども達も保護者の皆さまも、緊張したり、心配する場面もあるかと思います。
「ホー、、、、、、ホ」と鳴き始めたウグイスの声は、小さくとも「わたしは歌うんだ」という意思が感じられました。
 
KCKでの日々の中で、お友達とたくさんの時間を過ごし、先生や友達から繰り返し“I love you.”とハグをもらうことで、子ども達は徐々に不安を忘れ、「大丈夫なんだ!」と安心感を持って自分らしく輝き始めます。
4月からの新しいスクールイヤー。
一人ひとりの子どもたちが、それぞれの素晴らしい歌声をもって生き生きとしたハーモニーを奏ではじめるのを楽しみにしています。
 
Let’s have fun together!

3月の幼稚園だより


									
  “Good morning, my friends! Cameroon is a country with two languages, French and English.  So I will teach you French, now.(みなさーん、おはようございます!カメルーンは英語とフランス語の二つの言語を使う国です。
だからフランス語を教えてあげよう)”とカメルーン出身のMr.Siがホールに集まった6クラス全員に大きな声で語りかけました。
Country Presentation の始まりです。
“ I say ‘Bonjour, Monami!’And you say ‘Bonjour, Mr.Si.’ OK?(僕が「ボンジュール、モナミ」って言ったら、みんなで「ボンジュール、ミスター シー!」って言ってね!OK?)”と、早速始まりました。
その勢いに気持ち良く乗り、声を合わせて皆でフランス語でご挨拶。
  次に教えてくれたのは、カメルーンでは学校に行くと毎朝起立して国歌を歌う、という事。
“So let’s sing together. Stand up, everyone! Stand up straight, like this.(だからみんなで歌おう! さあ、立ってください。そして、こんなふうに真っ直ぐに立とう)
”え? カメルーンの国歌? フランス語? 英語? それとも両方?などと考えているうちに前奏が流れ始め、Mr. Siが直立不動で歌い始めました。
耳を澄ませていると、英語のようです。
全員を代表して一生懸命歌うMr.Siの横顔が一瞬和らぎ、嬉しそうにも見えました。
 
 民族衣装を持ってきたというMr.Siは、カメルーンの正装着の長い羽織りを身につける様子を見せてくれました。
Mr.Siが袖を通した瞬間、美しい刺繍模様が、より一層美しく鮮やかに見えました。
いつものMr.Siから、1人のカメルーン出身の紳士に変身(?)といったところ。
“Cool!(かっこい〜い!)”誰かが叫ぶ声が聞こえました。
素敵な衣装を着たMr.Siは、大きなスクリーンに写しだされる写真を使って国旗、食べ物、ダンス、美しい自然、野生動物、などを紹介してくれました。
 
  KCKのスタッフの出身地はまさに世界中。
肌の色もバックグラウンドもユニークな私たちですが、「子どもたちがより優しく、あたたかく、平和な世界をつくる人になって欲しい」という思いは一つ。
もうすぐもButterflyさんが卒園していきます。
世界中の国から来た先生達と共に日々を過ごし、歌を歌い、たくさん笑い、喜びを分かち合う中で、目には見えないしなやかな芯、多様な価値観や文化を尊重するやわらかな心が培われて来たはずです。

 
  どうかそのしなやかさを大切に、蝶の羽を背中につけて、世界に飛び出していって欲しいと願っています。

2月の幼稚園だより


									
 あるCaterpillarさんは春からずっと園庭のワゴンがお気に入り。
毎日のようにそれを引いて歩いています。
そのワゴンを他のお友だちが使っていると、地団駄踏んで大泣きをしていたり、真っ赤な顔をして泣きながら、後を追う彼を見かける事もありました。
そんな時、担任の先生は「You need to use your words. You don’t need to get upset.(言葉を使うんだよ。怒るのではなくてね)Let’s ASK him ‘Share, please!‘. Let’s go and talk together, OK?’(一緒に使おうってお願いしてみなくちゃ。一緒に行って話してみようね。
」と、彼の背中を優しくさすりながら話していました。
 
 冬休み明けのある日、Cocoonさんがそのワゴンを集団で引いていると、ワゴンが大好きな男の子が自分のお友だちと一緒にやってきて、何も言わずに奪ってしまいました。
ワゴンを取られて泣いていた子と一緒に話を聞きにいくと、彼は
Sorry…(ごめんね)”とすぐに謝りました。
泣いていた子はあっけない謝罪の言葉に戸惑っている様子でしたが、 “It’s OK.(いいよ)”と、小声でお返事。
謝罪を受け入れてくれた事に安堵した彼は“Thank you. May I use this?(ありがとう。これ、使ってもいい?)”と聞きました。
けれども、それはなかなか承諾してくれません。
長い沈黙にしびれを切らして“Answer, please(お返事をお願いします)”と言っても黙っています。
三度目に “Answer, please”を言った時、とうとう “OK”と静かなきっぱりとした口調で答えてくれました。
男の子は嬉しそうに “Thank you!”と言い残すと、ゴロゴロといつもの調子で走り出しました。
この一連の会話は、この男の子にとって大きな勇気のいるものでした。ピッタリと身を寄せてくる彼の小さな体から緊張と我慢している様子が伝わってきていました。
でも、彼は泣いたり無理やり奪い返すのではなく、言葉で解決することができたのです。
最後に”Thank you!”と彼が言った瞬間、思わず私は”Good job! You did it!”と両方のお友だちをもみくちゃにして喜びました。
 
 KCKの子どもたちは、言葉を使って心を育てていきます。
子どもたちが言葉を通して心を通わせることで、世界が今よりもっと優しく、平和になるように…。
私たちスタッフは、未来の世界を担う子どもたちの心を育てるという大切な役割を、これからも心を込めて果たしていきたいと思います。

1月の幼稚園だより


									
 “Who wants to sing in the singing competition? (歌のコンクールで歌いたい人いるかな?)” Ms. Belleが Story Timeの途中で本を閉じて言いました。
歌うのが大好きな恥ずかしがり屋の女の子のお話でした。
彼女が、歌のコンクールに出る事を決意するシーンを読み終わったところでした。
Skyblue Cocoonのたくさんのお友だちが一斉に手を挙げました。
Ms. Belleが一人指名すると、その子はちょっと恥ずかしそうにもじもじしながら、前に進み出ました。
即興でマイク替わりに手にした蛍光ペンを握りしめながら、Ms. Belleが本物の司会者のように話しかけます。
”Good afternoon. What’s your name?(こんにちは、お名前を教えてください)” “How old are you?(何歳ですか?)” “What song are you singing for us today?(今日はどの歌を歌ってくれるのかな?)”
トップバッターの子はやや緊張気味に、でもハキハキとお返事をして、まるで本当にステージに上がった出演者のようです。
“Good luck!”とMs. Belle に言われて蛍光ペンのマイクを受け取り、その子が歌い始めると、観衆のクラスメイトは手拍子で音頭をとったり、一緒に歌い始めたり、めいめいが自由に応援し始めました。
彼女は気持ちよく歌い終わると、お辞儀をして締めくくりました。
そして拍手の嵐。
Ms. Belleはマイクを受け取り、再度出演者を募りました。
次の子はもっとリラックスした面持ちで前に出ると、熱唱。
3人目の子は小さめの声で、でもニコニコと楽しそうに歌い、4人目の子は一点を見つめながらしっかりとした声で歌ってくれました。
4人が歌ったのは“Felis Navidad”。
CocoonさんがChristmas Performance の為に練習を重ねていた歌の中でフィナーレを飾る一曲でした。

 
 Story Timeからごく自然に発生した歌のコンクール。
マイクを持って歌う出演者と、声援をおくる観衆、そして司会者の心が一つになった時間でした。
「ああ、なんて楽しいんだろう。このまま時間が止まって欲しい!」と思うほどでした。

 
 2024年度のスクールイヤーも余すところあと数ヶ月。
少し寂しさも感じますが、子どもたち一人一人の成長を喜び合い、1日1日をより一層大切に過ごして参りたいと思います。
Have a wonderful winter vacation!

12月の幼稚園だより


									
 秋の日差しを暖かく頬に感じるある日、お外遊び中にCocoonさんが木登りをしていました。
どうやら初めてのチャレンジのようです。
足の置き方や向き、枝の握り方、そして体重のかけ方、動くタイミング、全てを自分で考えながら慎重に上へ登っていきます。
身体全体で木からレッスンを受けているかのようです。
動き一つひとつはぎこちなくても、自分自身を感じつつその瞬間その瞬間で“The Best Choice for now(最善の策)”と信じる動きをとっていきます。
すると、ちょうどそこにButterfly さんがやってきて、Cocoonさんに”Here! Here!(ここ、ここ!)”と次のステップを教えてくれました。
Cocoon さんは、それを聞くと、え!? そんな所に足置くの? とでも言いたげな表情をしましたが、信じてぐいと足を持ち上げてステップアップします。
すると、その動き一つで次に打つ手が見つかったようで、次々と手足を動かして進んで行きました。

 
 時には同じ木に登りたい子が次々と登り始め、大渋滞になってしまう事があります。
その状態で、先頭の子が「私、怖いから引き返したいんだけど、、、」と言い始めてしまうシーンもあります。
そんな時、子どもたちは木の上で自分の身の安全を確保しつつ、ゆずりあって行動しています。

 
 高い木の上でも、子どもたちが自分でお互いの事を考えて行動する様子を見ていると、とても温かい気持ちになります。
“Wow! You are so tall now! What can you see? How do you feel?(うわ〜、高いね〜!何が見える? どんな気持ち?)”きっと地面では感じなかった風を感じて、その風の新鮮な香りを感じて、見たことのない風景を見ているのでしょう。
初めてのチャレンジだった子は、親指を突き出して満面の笑みを見せてくれました。
地面から生える一本の木に登り、そこから見える風景は登った子に新しい視点を与え、世界は自分が思っている以上に広い事を教えてくれたはずです。

11月の幼稚園だより


									
 Sports Dayが終わり、School内では日に日にHalloween のデコレーションが増えて参りました。
エントランスでは大人の背丈より大きな骸骨がギターを持って、今にもロックを歌い出しそうです。
階段を登る途中では、双子の骸骨がバイオリンを持ってお行儀よくお座りして出番を待っています。
大窓から駐車場をも見下ろすのは、見上げるほどの大きなワラ男。
その後ろ姿の恐ろしい事!
タランチュラのような大きな黒いクモが、エントランスで靴の脱ぎ履きをするお友だちを上からじっと見つめています。
大小さまざまのジャックオランタンが陽気にニヤけ顔で並んでいます。もちろん、子どもたちが作った数々のクラフトも飾られていて、一層賑やかに感じます。

 
 怖いものが大の苦手な私は、この時期、ゾクゾクしながら過ごします。お友だちと廊下を歩きながら、”I don’t want to look at that way, because I am scared of that Mr. Skeleton. (あそこにいるガイコツさんがこわいから、あっちは見たくないのよ)”と言って、手のひらで視線を隠しながら歩きます。
すると、いろいろな面白い答えが返ってきます。例えば、こちらが怯えている様子を面白がりながら “I’m not scared. He is cute! (あたし、ちっともこわくな〜い。キュートじゃん!)”と言う子。
真摯に心配して、 “Don’t worry, he wouldn’t move. It’s just a decoration for Halloween. Because it’s almost Halloween. (動かないから大丈夫。ハロウィンが近いからさ〜あ、デコレーションなんだよ)”と、優しく説明してくれる子。
あるいは、 “Oh, maybe he wants to talk to you. (なんか、おしゃべりしたそうな顔してるよ)”と鼻をヒクヒクさせながら教えてくれる子。それぞれの性格がよく伝わってきます。

 
 ありがたい事に、強がりを言う子も、冷静に受け応えてくれる子も、おふざけの返しをしてくる子も、どの子も、私が救いの手を求めると、快く握ってエスコートしてくれます。
ああ、君たちのこの手の温もりがあるから、今年のHalloween も楽しめる。そう、思う今日この頃です。

10月の幼稚園だより


									
  9月上旬のある日、Caterpillarの先生が園庭の地面に白い線をひきはじめました。
“What’s this?(なんだ、これは?)”と興味津々のCocoonさんが集まってきました。
Caterpillarさんが線の端っこに2列に並び始めると、Cocoonさんたちはピンときた様子で、急にあれこれと先頭の二人にアドバイスを始めました。
そうです。Sports Dayにむけてのかけっこの練習がはじまるのです。
Cocoonさんは自分の一年前を思い出して「Go!って言ったら、こうやって走ってあっちまで行くんだよ。まだだよ…。」と、身振り手振りで「かけっこ」なるものを伝授しようとしているのです。
 
  やがて、先生の声で“Ready, Set, Go!”の合図と同時に二人が走りだすと、スタート地点に更にたくさんのCocoonさんが集まり、山の中腹には応援するCocoonさんが横一列に並んで座っています。
弟の走りが気になる子もいれば、バスで一緒になるあの子の走りを応援したい子もいます。
新しいペアが走り出す度に、スタート地点のCocoonさんは手をぱちぱち叩いて飛びあがりながら、“Good job!”と喜んでいます。
山の上からは、手拍子で音頭をとりながらの応援が始まりました。
「かけっこ」初心者のCaterpillarさんたちに、去年の自分を重ねて応援しているのです。
Caterpillarさんたちは声援の中を嬉しそうに走って行きました。
ニコニコと彼らの様子を見ていたMr.Siが“Look at them! I love it! They clap for the Caterpillars! (観て!こんなふうにCaterpillarさんの事を応援してるなんて、感動だよ!)”とCocoonさんが身もだえしながらCaterpillarさんに拍手をおくっている仕草を真似しています。
 
  Caterpillarさん全員が走り終わると、お友だちがずらりとスタート地点に並んで、誰かの号令で一斉に走り出す、かけっこの自主練が始まりました。
オレンジ、黄色、緑、青などいろいろな帽子の色が並んでいます。
CocoonさんとButterflyさんは、今年もリレーに挑戦します。
かけっことは違い、バトンをお友だちに手渡すリレーは一味違った楽しみを味わえるチャンスです。
一年、二年、と時が経つ間に、彼らの内側に育まれていくものが確かにある事を感じられる、幸せなひと時でした。

9月の幼稚園だより


									
 「ねえ、カブトムシ、Stag Beatle 見つけてよ」
外遊び中に、一人の男の子から頼まれました。
夏の日差しが照り付け、蝉の鳴き声が響き渡る園庭。
“OK. Let’s go and look for it.(わかった。探してみよう)”と答えると、二人で木々の間を歩き始めました。
「見つけてよ」と言われても、いったいどこにそんなカッコイイものがいるのか、見当もつきませんが、最初からサジを投げるわけにはいきません。
とにかく何かを見つけようと探しはじめました。
ところが、最初は「ああ!あそこに蝉の抜け殻がある!」と教えてもらっても、“Where?…Where? I can not find it…(え?どこ、どこ?見えないんだけど、、、?)” という調子で、私の目には何も見えないのです。
「ほら、ここから見て。ぼくの真上だよ」とその子に言われて、ようやく見つける事ができました。まったく頼りにならない先生です。
 
 しばらく後、少しづつ目が慣れてきて、木の肌や葉っぱに潜む生き物が、だんだんと見えるようになってきました。
そして、木の幹に一匹の蝉を見つけたのです。
“Oh, cicada! I found a cicada!(あ、蝉みーつけた!)”アブラゼミでした。
自分で見つけたのが嬉しくて満面の笑みでふりむくと、女の子と目が合いました。
“Did you know that a cicada is there?(あそこに蝉がいるって、知ってた?)” と声をかけました。
女の子は静かにこう言ったのです。
“I know.(知ってるよ)”「ああ、そうか、知ってたのか。」と思いながら蝉に目を戻すと、羽の端が破れている蝉だったのです。
“Did you know the wings are broken?(羽が破れてるって知ってた?)”そう言うと、彼女はまた静かに“I know.”と答えました。
そして、蝉は長い間地面の中で過ごし、やっと地上に出てきたら飛べるようになって、一週間ぐらいで死んでしまうと教えてくれました。
「だから、この蝉はもう弱ってるんじゃないかな」彼女がそう呟いた時、アブラゼミがパッと視界から消えました。
「あたしゃ、まだ元気よ!」とでも言っているかのように素早く飛んで行ってしまったのです。
思わず二人で顔を見合わせて大笑い。
 
 木々の間で「何か生き物を見付けるぞ!」と信念を持って探している時、時計が止まっているような感覚でした。
結局その日はカブトムシは見つからず、蝉の抜け殻をいくつかとアブラゼミ数匹を見つけただけでした。
でも、自分の目に見えなかった自然界の細部がだんだんと見えて来たり、アブラゼミの背中をそおっと触らせてもらった感覚は、とても新鮮でした。
 
 “Clean up time! Lunch time!(お片付けだよ〜。ランチの時間だよ〜)”という声が小さく聞こえました。
なるほど。本気で自然を愛し、楽しんでいる時ほど、その声は遠くに聞こえるものだ、と納得した夏でした。

8月の幼稚園だより


									
 7月のCooking Dayでタジンチキンを作った時のこと。
普通のジャガイモに混ざって紫色のジャガイモを調理しました。
子どもたちとカットする時も、その不思議な紫色のジャガイモは注目の的。
“It’s so purple!”と驚きの声があがっていました。手に持ってしげしげと見つめ、匂いを嗅いでみる子もいました。
 さて、その後、子どもたちが外で水遊びを楽しんで教室に戻ると、キッチンからなんとも美味しそうな香りが漂っていました。
着替えを終えてlunch timeが始まると、しばし教室が静まります。
“Yummy! This is yummy!”と声をあげる子も、夢中でタジンチキンとご飯を口に運んでいました。
普段、食が細い子も、不思議な事にCooking Dayの日はうれしそうに自分でスプーンやフォークを持って食べています。
ふと見ると、自分の器に入った紫色のジャガイモとにらめっこしている男の子がいました。
“What’s wrong with you?(どうしたの?)”と顔を覗きこむと、“It’s purple. I don’t like it.(紫色だから、きらいなの。)”と答えてくれました。
“Oh, I see. Did you try? (なるほどね。で、食べてみたの?)”と聞くと、首を横にふります。
まだ味を知る前から、紫色のジャガイモを食べたい気持ちになれなかったようです。
 さっそく、“Then, let’s try, first. (まずは、お味見してみよう)”と言って、胡麻粒ほどの大きさの紫色のかけらをフォークの先に乗せてあげると、おずおずと鼻を近づけて匂いをチェックした後、舌の先に乗せて味を確認していました。 
“That was too small to check the tast, right? (味見するには、小さすぎたね)”と言うと、 “Yes, too small.(うん、小さすぎ)”との事。
今度は豆粒ほどのかけらを乗せたフォークを勧めてあげると、するりと口の中に入っていきました。 
“Oh, … this is potato. The color is purple, and it’s potato. (ああ、これはジャガイモだ。紫色で、ジャガイモなんだ)”口の中の感触を確かめるようにゆっくりと教えてくれました。納得顔です。
“Yes, the color is beautiful! Look at this! (ほら、見て。こんなに綺麗な色だよ!)”とさらにフォークの上にかけらを乗せてあげると、フォークを持って食べ始め、全て完食していました。
 子どもたちにとって、いつも食べていない食材、あるいは初めての食材を口の中に入れて飲み込むということは、とても勇気がいる事です。
私たちは、その都度できるだけサポートしてほんの少しの味見、あるいは鼻で嗅いでもらって、新しい物を体験してもらいたい、チャレンジしてみてもらいたいと思ってサポートします。
その時、もし食べられなくても、あるいは好きでなくても、ちょこっとお味見することで、新しい大きな世界が広がる可能性があるのです。
昨日より今日、今日より明日と、成長する彼らは、自分が納得いく瞬間がきた途端、何事もなかったかのようにハードルを超える事があります。
食材の香り、感触、色の変化など、大人にはごく当たり前なことも、子ども達にとっては初めての新鮮な経験であることも多くあります。
彼らは食べる事を通して生きる事も学んでいくのです。
 
 なが〜い夏休み。親子でCooking Dayを開催して、一緒に食材をさわり、料理をする過程のごく一部でも良いので、一緒に取り組んでみるのはいかがでしょう?

7月の幼稚園だより


									
 教室に色とりどりのプールバックが用意されたとたん、待っていましたとばかりに暑い日もやってきました。
Water playの始まりです。
ミストのように優しい水、雨のように降ってくる水、くるくると回る曲線が生きているように見える水、色々な水を触ります。
ある子は手を差し出して、静かに感触を確かめ、ある子は歓声をあげて、大はしゃぎ。ある子は濡れようか、どうしようかとウロウロした後、「えい!」とばかりにお水にグイッと近づきます。
 
 子どもたちが覚悟を決める瞬間、それはそれは素敵な表情を見せてくれます。
まだ濡れていない彼らの中で「お水、触ってみたいな」「冷たいかな」「濡れちゃっていいのかな?」「ドキドキするなぁ」といろんな思いが駆け巡るのです。
そして、本人の意思がその子を突き動かし、「えい!」と思い切りよく水に飛び込むその瞬間、なんとも言えない満面の笑みが顔中に広がります。
自然と「ひゃー」「きゃー」と声が出るお友だちもたくさんいます。
今まであれやこれやと思いを巡らせていたことは一気に吹っ飛んでしまい、心が解放される瞬間です。
その横顔をみていると、ああ、なんて素敵なんだろうと、うっとりします。
”You made a good choice! Good job!”と声をかけたくなります。
 
 ダイナミックにwater playを楽しんだ後、全身が濡れて体に張り付いた服を着替えるのは至難の技ですが、どのお友だちもCaterpillarさんからButterflyさんへ成長する中で、だんだん自分でできるようになっていきます。
彼らと一緒に生活する中で、慣れないことに戸惑い、躊躇している様子が見られる時、濡れたら着替えれば良い、転んだら起き上がれば良い、汚れたら洗えば良い、失敗してもやり直せる、と小さな出来事一つひとつにエールを送ります。
自分自身の感情に素直に、そして思い切って決断をし、行動できるようになってもらいたい。そして飛び込んだ先でたくさんの感動を体験してもらいたい。
そう願います。

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